自然への取り組み
生物多様性
基本的な考え方
地球上の水や植物、酸素を始めとするさまざまな財やサービスを生み出す生物多様性は、IDECグループの事業継続を支える大切な存在の一つであり、気候変動と同様に重要な取り組み課題と考えています。
環境関連の情報開示として、IDECグループは2022年からTCFD(気候関連財務情報開示)を実施してきましたが、ステークホルダーの要請は気候変動に加えて、生物多様性を始めとするTNFD(自然関連財務情報開示)にまで範囲が広がりつつあります。
今後は、TCFDと合わせて、TNFDフレームワークに沿った自然関連財務情報の開示、リスクと機会の評価アプローチ(LEAP)を活用した分析準備、生物多様性に対する今後の方針や行動規範を、環境戦略委員会で取り組む予定です。
生物多様性リスクの分析
IDECグループの事業活動が生物多様性に与える影響や生物多様性実績のモニタリングに参考となる指標を定義するために、2023年度よりIDECグループの生物多様性リスクの分析と評価を実施しました。評価ツールには世界自然保護基金(WWF) が開発したBiodiversity Risk Filterを活用し、国別の生物多様性リスクを定量化しました。合わせて、グループ全体での生物多様性リスク指標の上位10項目を特定しました。
IDECグループの生物多様性リスクを、国ごとの各拠点リスク評価に基づいて定量化した結果を、以下のグラフにまとめました。グローバル24拠点すべての総合評価はリスクが低い、または中のいずれかで、生物多様性リスクの高い拠点はありませんでした。

IDECグループの生物多様性リスク指標について、各拠点の評価に基づいて定量化した結果をリスクの高い順にグラフにまとめました。気候関連リスクの高い拠点数の多い生物多様性リスク指標には地滑り、熱帯低気圧、水不足がありますが、リスクの高い拠点数が全体に占める割合は昨年度と同程度で、リスクスコアの悪化は見られませんでした。
一方で、「山火事の危険」については、リスクの高い拠点数は減少したものの、中程度のリスクと分類された拠点数が大幅に増加していました。Biodiversity Risk Filterに登録したIDECグループの拠点数は、2023年度が19拠点、2024年度が24拠点であり、単純比較はできないものの、山火事の危険が中程度と分類された拠点数と全体に占める割合は、2023年度は6拠点(31.6%)、2024年度は15拠点(60.0%)

でした。2025年に入ってから、アメリカ・ロサンゼルス、オーストラリア、韓国などで大規模な山火事が発生しており、日本でも岩手、岡山、愛媛県で山火事が起き、森林が消失しています。山火事の原因は、人為的要因だけでなく、地球温暖化による気温上昇や気候変動による降水量の減少、乾燥、強風などが挙げられています。
今後は、気候関連生物多様性リスク指標について、各指標のリスクスコアの変化を追跡し、リスクが高いと評価された拠点ごとの現状把握と分析を行う予定です。また、TCFDと合わせて、TNFDフレームワークに沿った自然関連財務情報の開示とリスク機会の評価アプローチ(LEAP)を活用した分析準備を、環境戦略委員会で取り組む予定です。
事業敷地の緑化
IDECグループの事業所や本社では、敷地の緑化を通じて生物多様性の保存に取り組んでいます。
<中庭>
2018年6月に本社の中庭をリニューアルしました。日本固有種の樹木を含めた30種類以上の大小からなる樹木を植えることで地域の在来種中心の森を再現し、「いずみの森」と名付けています。緑が少ない周辺地域に野鳥や昆虫が訪れる緑地や環境をつくるこの活動は、(公財)都市緑化機構が運営するSEGES(社会・環境貢献緑地評価システム)で企業緑地の優良な保全、創出活動を対象とする「そだてる緑」部門において、2023年4月に「Excellent Stage2」の認証を取得し、2024年2月にはその認定を維持しました。(詳細はこちら)
いずみの森には、廃材を利用して社員が手作りしたエサ箱にヒエやアワなど殻付きのエサや福崎事業所で収穫されたヒマワリの種を置いたり、野鳥がひと休みできる水場としてのバードバスや、昆虫や爬虫類などの小さな生き物が生息できる場所としてエコスタックを設置しています。


<福崎事業所>
福崎町の花であるサルビアやヒマワリなど季節に応じた草花を育てています。今後は、在来種を守り育てていく場としての活用を検討しています。
事業所での生き物調査
事業所周辺の地域の生態系に与える影響を把握することで、地域の環境保全に寄与したいという思いで、事業所メンバーが中心になり、本社、滝野、福崎、尼崎、IDECロジスティックスサービス(たつの市)周辺で生きもの調査を実施しました。2023年に本社で取得したSEGES「そだてる緑」の外部審査機関のアドバイスも得て、生態系被害防止外来種(セイタカアワダチソウ)などの駆除も行いました。
環境教育
環境E-Learning
2024年度に社内で実施した環境教育は、イントラネットを活用してTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が定義する大気、淡水、海、陸の4領域に沿った生物多様性と生き物の解説に加えて、IDECの環境配慮強化型製品の紹介や、内部炭素価格 (ICP)を活用した環境投資の試算事例を取り上げました。
また、環境マネジメントシステム学習教材や入社時研修教材の中にCDPやEco Vadisの解説、IDECの環境への取り組み事例を盛り込んでいます。2024年度の環境教育として、イントラに計6項目の連載「環境ワード」を掲載しました。

従業員参加の「生物多様性」写真コンテスト
毎年10月にグローバルで実施するサステナビリティ月間で、2023年度は「地球温暖化対策」をテーマにした写真コンテストを実施しました。従業員とその家族の作品を募ったところ、世界中のIDECグループ従業員からの応募がありました。
「食」を通じた生物多様性
食を通じて生物多様性を身近に感じてもらう企画として、毎年10月のサステナビリティ月間などで本社食堂にてサステナブルメニューの提供を行っています。
IDEC本社食堂(日本)
国際認証規格ASC認証を取得した養殖の鮭とイクラを使ったサーモンクリームパスタ(写真左)やエビを使ったエビのレモンクリームパスタ(写真右)などを週替わりで提供しました。本社食堂では、持続可能性の基準を満たした農園に与えられるレインフォレスト・アライアンス認証を受けたコーヒー豆を使用したコーヒーを通年で提供しています。

IDEC IZUMI(香港)
1日もしくは1食を野菜のみの食事にする、野菜デーをオフィスおよびベジタリアン向けのレストランにおいて実施しました。野菜のみのメニューは健康促進だけでなく、畜産による生物多様性の喪失が進む中、森林保護・温室効果ガスやごみの排出量削減をはじめとした環境保全への貢献に繋がります。

水資源
基本的な考え方
水資源は、人間や植物だけではなく、地球上のあらゆる生物が生きる上で不可欠なものです。一方で、地球上の20億人ほどの人たちは安全に管理された水を使用できない状況にあり、不衛生な水が原因による疾患で毎年180万人の子どもが命を落とすと言われています(出典:国連広報センター)。
IDECグループには水資源に大きく依存する製造工程やサービスはありませんし、大半が上水道の利用に限られますが、水不足や水質汚染などの水問題はIDECグループの事業だけではなく、従業員やその家族の生活にも影響を及ぼすと考えております。
このような考え方に基づいて、完全に管理された上下水道・衛生(WASH: Water, Sanitation and Hygiene)サービスと石鹸、消毒液など感染症対策に必要な衛生品を100%のIDECグループ全従業員に提供することならびに製造拠点での水関連法令の遵守をIDECグループの水資源に関連する目標に設定し、各拠点での実施状況の把握を進めております。
IDECが創業より大切にする「省の精神」に基づいて、自然の恵みである水資源を大切に活用するとともに、事業活動で自然にかける負担の軽減を目指すことに取り組んでいきます。

水リスクの分析
水資源はIDECグループの事業継続に重要であると同時に、地球環境やそこで生息するすべての生き物にとっても不可欠な資源です。一方で、地球温暖化を始めとする気候変動の影響を受けて、水不足や集中豪雨、洪水などの水リスクは年々高まっています。
水資源の適切な管理と水リスクの評価、評価結果を事業継続に活用することを目的として、2023年度より本社、IDECグループの主要製造拠点および開発拠点の合計25か所について水リスク評価を実施しています。評価ツールには、世界資源研究所(World Resources Institute)が開発したAqueduct Water Risk Atlas 4.0を活用し、各拠点についてAqueductが定める水リスク8項目と全般的水ストレスを定量化しました。また、主要拠点の取水量も調査しました。
Aqueductの水リスク全般項目の評価を世界地図に反映させた結果は以下の通りです。25か所のうち、リスクが極めて高いと評価されたのは4拠点(米国1拠点、チュニジア2拠点、タイ1拠点)で、リスクが高いと評価されたのは1拠点(中国)で、昨年度からの変化はありませんでした。
水ストレス項目の評価結果では、リスクが極めて高いと評価されたのは5拠点(米国1拠点、チュニジア2拠点、中国1拠点、タイ1拠点)で、リスクが高いと評価されたのは1拠点(英国)でした。水ストレスが極めて高いおよび高いと評価された5拠点の水使用量合計は、2024年度のIDECグループ全体の水使用量の3x.xx%を占めています。
その他のリスク項目には、物理的リスク、地下水くみ上げによる地盤沈下、経年変動、季節変動、かんばつ、河川流域洪水、沿岸洪水があります。Aqueductを活用したリスク評価は年1回実施し、内容を更新する予定です。

雨水の貯留と敷地内緑化への有効利用(本社)
自然の恵みである水資源を大切に活用するための取り組みとして、2013年の本社社屋建設時に地下に雨水貯水タンクを設置しました。最大148㎥の雨水を地下に貯留することが可能で、貯留水は本社中庭緑地への散水や気温上昇時の打ち水などの用途で有効活用しています。本社中庭は緑の認定SEGES (社会・環境貢献緑地評価システム)「そだてる森」部門で「Excellent Stage2」の認定を取得しました。

節水啓発キャンペーン(蘇州和泉電気有限公司)
2023年10月のサステナビリティ月間に合わせて、蘇州和泉電気有限公司(中国)では全社員参加の節水キャンペーンを実施しました。「地球全体の水事情」「なぜ水不足が起こるのか」といったテーマでの水事情に関するニュースの毎週発信や、具体的な節水方法の紹介で社員の環境に対する感度を高めた結果、約3%の節水を実現しました。今後も節水に向けて取り組んでいきます。
